夫婦の問題を長年扱ってきた臨床心理士が語る、セックスレス・会話レスの克服の考え方、対策、夫婦のカウンセリング。質問やコメントを歓迎します。
典型例2:自分たち以外のことは何でも話すコミュニケーション
夫婦でたくさん話をしているが、実はよく観察すると、常に第3者の話であって、自分たちの話を全くしないというケースもあります。これも、気にならない人にとっては、たいした問題ではないのかもしれませんが、気になる人にとっては大きな問題です。
そして、これも隠れ会話レスなので、自分がいらいらしたりするとしても、それがこの隠れ会話レスのせいであるということが分かりにくいのです。
短い例を挙げるのは難しいのですが・・・
たとえば
妻:○○ちゃん(子供)の受験どうしたらいい?
夫:そんなに無理させないでいいんじゃないか?
妻:△さんも塾にやっているのよ。
夫:□さんは塾にやらずに、のびのび育てたけど、いい学校に入ったじゃないか。
問題があるのは、自分のことを語っていないことです。
もうちょっと激しくして
妻:○○ちゃん(子供)に受験させましょうよ
夫:小学生から勉強させる必要はないだろ。
妻:そんなんじゃどこの学校にも行けないわよ。
夫:公立の中学に行けるじゃないか。
となると、すこし自分の意見が出ていますよね。
これでも、ずいぶん相手とかかわったと感じると思います。
しかし、これも厳密にいえば、子どもという第3者のことを話しています。
そのことが悪いのではなくて、そのこと「しか」話さない関係性だとすれば、ちょっと危険かもしれません。
自分のことを語るとは
妻:○○ちゃん(子供)に受験させたいわ。
夫:小学生から勉強させるのはかわいそうだと俺は思うな。
妻:公立中学に行かせるのは、不安なのよ。
夫:そっか。どんなことが不安なんだい。
妻:ゆとり教育で勉強量が減っているし、環境も良くないってい噂だし。高校受験大丈夫かなって思うのよ。
夫:君が○○の将来のことを考えて不安なのはわかったよ。僕は、小学生のうちから勉強勉強って縛ってしまうことのほうが不安なんだ。
・・・
この例がほかの例と違うのは、自分の感情に根ざしたことを、そのまま(「そんなんじゃどこの学校にも行けないわよ」→「公立中学に行かせるのは、不安なのよ」、「小学生から勉強させる必要はない」→「小学生のうちから勉強勉強って縛ってしまうことのほうが不安なんだ」)と話している点です。
こうやって、話題は子供のことであっても、自分たちの気持ちのことを話しています。
前の2つの例のように、「子供のこと」だけを話していると、次第に相手が「わからない」存在になっていきます。話しているのに相手がわからないのですから、実質的に会話レスなのです。
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